与えることは、なぜ人の記憶に残るのか 📚

「一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである」。

三浦綾子『氷点』のこの言葉は、価値の基準をそっと反転させます。私たちは成果や肩書に心を奪われがちですが、人の心に長く残るのは、分かち合い、支え合い、赦し合った時間の方です。本稿では、この名言を導きとして「与える」という行為の意味を、作品の文脈と現代の生活実感の双方から考えます。