女性を口説くための「魔法の呪文」が存在するとしたら、どうするか。
全米でベストセラーとなり、日本の恋愛工学ブームの火付け役にもなったニール・ストラウスの『ザ・ゲーム』は、その問いに本気で向き合った男たちの記録になる。
単なるナンパのマニュアル本ではない。冴えないオタクだった著者が、世界最強のナンパ師集団(PUA: Pickup Artists)に潜入し、「神」と呼ばれるまでの2年間を描いた、衝撃のドキュメンタリーとして読める。
技術で、心は操作できるか
本書には、心理学を応用した具体的なテクニックが並ぶ。
- ネギング──美しい女性をあえて軽くけなし、相手の自信を揺さぶることで自分の価値を相対的に上げる
- ピーコッキング──孔雀のように派手な格好で注目を集める
- 7時間ルール──出会いから親密な関係に至るまで、平均7時間の共有時間が必要という経験則
結論から言えば、技術は機能する。著者はハリウッド女優やモデルを次々と「攻略」していく。
だが物語は、そこから予想外の方向へ転がっていく。
「偽りの自信」の代償
技術を極めた男たちが手に入れたのは、女性の体だけだった。
技術で相手を動かせば動かすほど、彼らの内側は空洞になっていく。
「本当の自分──オタクである自分──を見せたら、彼女たちは去っていくのではないか」
その恐怖から、彼らは24時間「最強のナンパ師」を演じ続け、精神を病んでいく。師匠ミステリーの入院。コミュニティの崩壊。
自分ではない何者かになろうとすることの限界が、これでもかというほど残酷に描かれる。
ゲームを降りる勇気
最終的に著者は、一人の女性を愛し、ナンパコミュニティを去る決断をする。ゲームオーバーを、自分で選ぶ。
本書の最大の教訓は、ナンパのテクニックではない。
自信とは、他人の評価──落とした女の数──で埋まるものではなく、自分自身を受け入れることでしか生まれないという、身も蓋もない真理のほうになる。
まとめ──コントローラーを置いた者だけが知ること
モテたいと願う男には、この本を勧めたい。
前半のテクニック集は、対人コミュニケーションの技術として今でも有用になる。だが、本当に読む価値があるのは、後半の人間ドラマのほう。
「女を落とすゲーム」に勝ち続けた男たちの顔が、勝つたびに暗くなっていく。その描写がすべてを語っている。
ゲームの攻略法を学び終えたら、最後に残る問いは一つ。
そのコントローラーを、いつ置くか。
