「仕事と勉強で手一杯で、遊ぶ時間なんてない」
真面目な人ほど、そう考える。だが観察してきた範囲で言えば、それはかなりもったいない生き方になる。
「よく学び、よく遊べ」
この使い古されたことわざには、不確実な時代を生き抜くための、極めて合理的な戦略が畳み込まれている。投資理論の視点から、その構造を解いてみる。
学びの役割──「安定」を生み出す
独学、資格、スキルアップ。「学び」の活動は、人生の平均点を押し上げる。
英語ができれば仕事の幅が広がる。専門スキルがあれば食いっぱぐれない。学びは、リスクを減らし、成果のバラつきを小さくするための投資になる。
資産運用でいえば、国債やインデックスファンド。派手さはないが、人生の土台を堅実に支えてくれる。
遊びの役割──「飛躍」を生み出す
一方、「遊び」の本質は、非合理と偶然性にある。
役に立つか分からない。予測できない。ただ楽しいからやる。旅、マイナーな趣味、馬鹿話。
これらは一見無駄に見えるが、人生のバラつきを大きくする行為になる。9割は何も生まない。だが残りの1割が、計算では絶対に到達できない場所へ連れていく。
旅先の偶然の出会いが仕事につながった。趣味の知識が本業で突然火を噴いた。点と点が後からつながる瞬間は、決まって「遊び」の側に種があった。
資産運用でいえば、ベンチャー投資。ほとんど外れるが、当たれば桁が違う。
バーベル戦略──両端だけを持つ
『ブラック・スワン』の著者ナシーム・タレブは「バーベル戦略」を提唱した。
中途半端なリスク(ミドルリスク・ミドルリターン)を取るのではなく、極めて安全な資産(90%)と、極めてリスクの高い冒険的な資産(10%)の両端だけを持つ。これが不確実性の時代の最適解だという考え方になる。
人生に当てはめると、こうなる。
- 学び(90%)──仕事と勉強で、確実に生活できるスキルと信頼を固める。守り
- 遊び(10%)──余剰リソースで、未知の体験に思い切り突っ込む。攻め
学び100%の「真面目なだけ」の人間は、予測可能で、代替可能になっていく。遊び100%では、生活が立たない。
安定という大地に足をつけたまま、遊びという翼で偶然を拾いに行く。このハイブリッドだけが、両方の弱点を消してくれる。
まとめ──「最近、遊んでいない」は危険信号
「最近、遊んでないな」と感じたら、それは疲れのサインであると同時に、人生の可能性が閉じかけているサインでもある。
今週末、生産性という言葉をいったん置いて、わけのわからない場所へ行ってみる。
人生を変える偶然は、計画表の中には書かれていない。
予定の外側で、こちらが見つけるのを待っている。
