「男は、冷蔵庫のバターが見つけられない」 「女は、地図を回さないと道が分からない」

心当たりのある光景だと思う。

世界中で翻訳され、論争と笑いを巻き起こしたアラン&バーバラ・ピーズ夫妻の『話を聞かない男、地図が読めない女』は、男女の行動の違いを「個人の性格」ではなく、脳の構造とホルモンの違いとして解き明かした一冊になる。

古い本だが、ここに書かれた「男女取扱説明書」は今も現役で使える。

脳の配線が違う──シングルタスクとマルチタスク

男の脳は、トンネル視界

大昔、狩りをしていた男の脳は、遠くの獲物に集中し、空間を把握する能力に特化した。

その代償として、一度に一つのことしかできない。テレビを見ている夫に話しかけても返事がないのは、意地悪ではなく、本当に聞こえていない。音声の入力が切れている。

女の脳は、レーダー視界

家を守り、子供を育ててきた女の脳は、周囲の些細な変化を察知し、複数のことを同時にこなす能力に特化した。

右脳と左脳をつなぐ脳梁が太く、情報の連携が滑らか。電話しながら料理をして、子供の様子まで見ている。男から見れば神業だが、本人にとっては平常運転になる。

ストレス対処が違う──沈黙と、会話

男は、黙って引きこもる

男はストレスを感じると、脳を休ませるために一点を見つめてぼんやりするか、自分の殻に閉じこもる。一人で趣味に没頭する時間が、回復の儀式になっている。これを邪魔されると、静かに、確実に機嫌が悪くなる。

女は、話して放電する

女はストレスを感じると、誰かに話すことで脳内の圧力を下げる。解決策は要らない。ひたすら喋り、共感されることで、デトックスが完了する。

悲劇の型は決まっている。黙って回復したい夫に、「ねえ、聞いてるの? 何か言いなさいよ」と詰め寄る妻。どちらも正常に動作しているのに、組み合わせだけで地獄ができあがる。

空間認識──地図で考える脳、目印で考える脳

男の脳には空間認識に強い領域があり、頭の中で地図を3D回転できる。女はこの領域の代わりに、言語の領域が発達している。

  • 男の道案内──「北へ200m行って、国道を右折」
  • 女の道案内──「赤いポストの角を曲がって、パン屋の向かい」

どちらも正しく目的地に着く。方式が違うだけ。

女に地図の読み方を説教するのも、男に冷蔵庫の奥のバターを探させ続けるのも、魚に木登りをさせる類いの不毛になる。

まとめ──違いは、欠陥ではない

この本のメッセージは、男女のどちらが優れているという話ではない。

「男と女は違う。ただ、違うだけだ」という事実を受け入れようという提案になる。

互いの脳の仕様を欠陥として責め合うか、「ああ、そういう仕様なのね」と笑い飛ばすか。

長く続く関係は、観察してきた限り、ほぼ例外なく後者の側にある。

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