世界中どこを見ても、女性のほうが男性より長生きになる。
生物学的な理由や喫煙率の違いなど諸説あるが、心理学の側から見ると、興味深い仮説が一つある。
**「誰かのために動く頻度が、女性のほうが高いから」**という説。
他人の世話はストレスが溜まって寿命が縮みそうに思える。だが科学が示しているのは、その逆になる。「情けは人のためならず」は、精神論ではなく生理学の話だった。
オキシトシンという、天然の不老薬
誰かに親切にしたとき。スキンシップをとったとき。感謝されたとき。
脳内では「オキシトシン」と呼ばれるホルモンが分泌される。愛情ホルモンの異名を持つこの物質には、見過ごせない健康効果が報告されている。
- ストレスホルモンを抑える。 免疫力を下げ、血管を傷つけるコルチゾールの働きを抑制する
- 心血管を守る。 血圧を下げる方向に働くことが知られている
- 幸福感を上げる。 不安や恐怖を和らげ、心を穏やかに保つ
従来、女性は子育てや地域のコミュニティ維持など、他者と関わり、世話をする役割を多く担ってきた。この「お節介」とも呼べる行動の積み重ねが、オキシトシンという守り神を日常的に呼び込み、結果として長寿につながっている可能性がある。
男の「孤立」は、静かに寿命を削る
一方、男は定年退職を境に社会的なつながりを失い、孤立しやすい。
「自分のことは自分でやる」という自立は立派だが、行き過ぎると「誰のためにも生きていない」という状態に行き着く。
孤独は、喫煙や肥満に匹敵する死亡リスク因子とされている。「誰からも必要とされていない」という感覚は、生体の防御システムを弱らせ、心身の老化を加速させていく。
退職した途端に老け込む人と、いつまでも若い人。隣で見てきた範囲で言えば、分かれ目は運動でも食事でもなく、「誰かのために動く場所」を持っているかどうかだった。
「利他」は、自分のための戦略でもある
「自分のために」頑張るのには限界がある。だが「あの人のために」なら、人は不思議と力が湧く。
大げさなことは要らない。
- 電車で席を譲る。エレベーターを開けて待つ
- 趣味の集まりや地域の活動に、顔を出してみる
- 「ありがとう」を口に出す。感謝を伝える行為もまた、オキシトシンを呼ぶ
自分を犠牲にする話ではない。意識の照準を「自分」から「自分たち」へ、少しだけ広げてみるという話になる。
それだけで細胞は喜び、人生の時間は長く、そして濃くなっていく。
長生きの秘訣を聞かれた老人たちが、サプリの名前ではなく、決まって人の名前を挙げるのには、ちゃんと理由がある。
