「ダイエット中なのに、ケーキを食べてしまった」 「芸能人の不倫ニュースが、つい気になってしまう」
自分の行動の理不尽さに、嫌気がさしたことはないだろうか。
『進化心理学から考えるホモサピエンス』を読むと、それが性格の問題ではなく、もっと根深い「生物としてのバグ」であることが分かってくる。
人間の体と脳は、1万年前のサバンナで暮らしていた頃からほとんど変わっていない。変わったのは、環境のほうだけ。この「進化の遅れ」と「環境の激変」のミスマッチこそが、現代人の悩みの多くの正体になる。
サバンナ原則──脳はまだ石器時代にいる
進化心理学には「サバンナ原則」という考え方がある。
人間の脳は、狩猟採集生活をしていた祖先の環境に適応するよう設計されており、現代社会には適応していない。
この原則で、日常の「理不尽」が次々と説明できる。
なぜ甘いもの・脂っこいものに勝てないのか
サバンナでは食料は常に不足し、高カロリーな糖と脂肪は生存に直結するご馳走だった。「見つけたら、あるだけ食え」というプログラムが脳に刻まれている。
飽食の現代で人が肥満に苦しむのは、このプログラムが誤作動しているから。意志の弱さではなく、仕様の問題になる。
なぜ男は浮気し、女は条件を見るのか
- 男──一度の行為で子孫を残せるため、多くの相手と関係を持とうとする衝動がプログラムされている
- 女──妊娠・出産・育児に莫大なコストがかかるため、資源を確実に提供してくれる相手を厳選する衝動がプログラムされている
現代の倫理とは相容れない。だが、生物学的な動機の出どころはここにある。
なぜゴシップが気になるのか
サバンナの小集団では、誰が誰と寝たか、誰が裏切り者かという情報は、自分の生死に関わる重要情報だった。
会ったこともない芸能人の不倫に強く反応してしまうのは、この情報収集本能が、対象を間違えて作動しているから。
時代遅れのプログラムと、どう付き合うか
「本能だから仕方ない」で終わらせる必要はない。重要なのは、自分の脳に時代遅れのプログラムが入っていると自覚することのほう。
- ケーキに手が伸びたら──「これはサバンナの飢餓対策プログラムだな。今は飢えていないから不要」と一歩引いて見る
- 不安で動けなくなったら──「これは猛獣から逃げるための警報装置だな。今ライオンはいない」と落ち着かせる
自覚した瞬間、プログラムの自動実行に、一時停止ボタンがつく。
まとめ──祖先からの、少し使いにくい贈り物
人間は、石器時代のハードウェアで、現代社会というソフトウェアを動かしている。エラーが起きて当たり前になる。
自分の弱さや衝動を責める必要はない。それは過酷な環境を生き抜いた祖先からの「生存への贈り物」なのだから。
ただ、現代では少し使い勝手が悪い。
だから、なだめながら、すかしながら、うまく付き合っていく。それが原始の脳を積んだまま都会を生きる、唯一の現実解になる。
