「仕事だけが人生ではない」。その通りだと思う。
同時に、働き方や住む場所、休む時間を自分で選ぶには、生活を支える収入も関わってくる。お金は人生の価値を決めるものではないが、選択肢を支える道具にはなる。
稼ぐことに関心を持つのは、強欲だからでも、仕事を人生の中心に置くからでもない。何を守りたいのかを考え、そのための余地を作ることでもある。
稼ぐ力は、収入額だけを指さない
稼ぐ力という言葉から、年収や肩書きを思い浮かべる人は多い。けれど、働く場所を選び直せること、条件を確かめて交渉すること、必要なときに休めることも、仕事の選択肢に含まれる。
収入が高ければ必ず自由になるわけではない。健康、家族の事情、住んでいる地域、景気や雇用環境など、自分だけでは変えられない条件もある。収入の多寡を、人の価値と結びつけないでいたい。
それでも、自分にできる仕事や経験を把握しておけば、次の選択を考える材料になる。
今の仕事を言葉にする
新しい資格や副業を探す前に、今の仕事で何をしているかを書き出してみる。
- どんな課題に対応しているか
- 誰に、どんな価値を渡しているか
- どんな工夫や判断をしてきたか
- その経験を、別の職場でも使える形で説明できるか
「営業をしている」だけでなく、「顧客の状況を整理し、導入後の運用まで支援している」と表せるかもしれない。具体的にすると、身につけた力や、補いたい部分が見えてくる。
実績をまとめることは、転職のためだけではない。今の職場で役割や条件を相談するときにも、自分の仕事を説明する助けになる。
自己投資は、目的と負担を決めてから
学びや道具にお金を使うことが、いつも投資になるとは限らない。講座を買って安心するだけで、学ぶ時間も使い道も決めていなければ、負担が残ることもある。
申し込む前に、「何をできるようになりたいか」「週にどれくらい時間を取れるか」「どの金額までなら生活に響かないか」を考える。小さく試せる方法があれば、先にそれを使ってみる。
貯蓄をすべて動かす必要はない。家計や健康を損なうような投資は、選択肢を増やすという目的と合わない。
稼ぐことと、大切なものを両立させる
給与交渉をするか、転職するか、副業を始めるか。どれも人によって条件が違う。稼ぐ力を育てることは、特定の働き方を選ぶことではない。
家族との時間を優先して昇進を見送る。安定を選び、今の職場に残る。新しい仕事に挑戦するため、少しずつ準備する。自分の事情と大切にしたいものを考えたうえで選ぶなら、どれも自分の判断だ。
「足るを知る」ことと、望みを口にするのを恐れることは違う。何を守りたいのか、そのためにどの程度の余裕がほしいのかを考える。
稼ぐことに人生のすべてを預けなくていい。けれど、お金の話を遠ざけすぎて、自分の選択まで狭める必要もない。まずは今ある経験を書き出し、選べる範囲を確かめてみたい。